大人気コミックの映画化の前に
立ちふさがった大きな壁
当時1巻が出たばかりの大人気コミック『SAKAMOTO DAYS』を読んだ時、「坂本と葵の関係性が、僕からすると福田(雄一)ファミリーを見ているようでした」と語るのは松橋真三プロデューサー(以下松橋P)。一見恐妻家に見えるが、実は深い絆と愛情で結ばれている2人の姿が監督夫婦と重なったという。「奥さんを愛しているけど、同時に恐れている(笑)。福田さんにピッタリの企画だなと。かねてより我々の中で『今日から俺は!!』を超える作品を作りたいという目標があり、『SAKAMOTO DAYS』はそれを超えるパワーを持っている作品だという共通認識も持てました」(松橋P)既に大人気の原作だったが早い段階のアプローチが功を奏し、原作者・鈴木祐斗サイドも映画化を快諾。多忙な監督自らすぐに脚本執筆にとりかかるが、そこに「太った坂本をどう作り上げるか」という壁が立ちふさがる。「当初は痩せた坂本と太った坂本を、別々の役者さんに演じてもらうという案もありました。でもそれが成功する未来が見えず…。参考にしたのは『アベンジャーズ』で一時的に太ったマイティ・ソーです。あれも特殊造形で同じ役者さんを太らせていますが、今回は太ったバージョンの方が出演シーンが多く、しかも激しいアクションもある。果たしてそんなことをやってくれるスターがいるのか?と。監督に脚本は進めてもらいつつ、キャスティングは難航していました」(松橋P)
まさかの目黒蓮の主演決定に監督も歓喜!
まさかの目黒蓮の主演決定に
監督も歓喜!
目黒蓮へのオファーに関しては「今の日本でNo.1のスターということと、痩せている時の坂本にそっくりだと思ったからです」と松橋P。実は目黒と坂本は年齢も身長もほぼ同じ。だが毎回約4時間かけて重さ8㎏の特殊メイクを装着するというとてつもない負担を考えると、「正直ダメ元でのオファーでした。まさか受けてくださるとは思っていなかったです」と本音も。「ただアクションが素晴らしいというのは、『トリリオンゲーム』で彼と仕事をしたアクション監督の田渕(景也)さんから聞いていましたし、何よりご本人がアクションをやりたいという想いが強いと。そこに賭けてのオファーでした」目黒サイドからの返答は、「自分がやらせてもらえるのであれば、太ったバージョンも含めすべて自分でやりたいです」という予想外のもの。以前から目黒ファンを公言していた監督は当然歓喜し、目黒の出演が決まってから脚本を書き換えた箇所もあったとか。「鹿島と戦っている最中に葵から電話がかかってくるシーンなどは監督のオリジナルで、目黒さんに決まってから加えられたところです。細かい部分ではありますが、結果としてとても味わい深い箇所が変更になっています。約2時間という尺の中でアクションをどこまで入れるのかもかなり皆で議論しました。遊園地のシーンは予算的に削ろうかという案も出ましたが、家族を大事にする坂本らしさが最も出ているところでもあるので、そこは死守しました」(松橋P)原作へ最大のリスペクトを全員が持ちながら、家族愛あり、アクションあり、笑いありの豊かな脚本が完成した。
大人気コミックの映画化の前に
立ちふさがった大きな壁
撮影前から始まっていたハードなアクション練習
撮影前から始まっていた
ハードなアクション練習
主演の目黒を筆頭に、豪華役者陣が揃った本作。坂本のバディとなるシンには高橋文哉、愛妻・葵には上戸彩、坂本ファミリーの一員でもあるルーには横田真悠。殺し屋界の最強クラス“ORDER”に属する神々廻には八木勇征、大佛には生見愛瑠、そして変幻自在の南雲には原作の大ファンであるという北村匠海が参戦。他にも桜井日奈子、安西慎太郎、戸塚純貴、小手伸也といった面々が個性豊かな殺し屋に扮することが決定する。また全身凶器&トナカイの被り物が強烈な鹿島には塩野瑛久、着用すると透明化する“透明スーツ”を駆使してターゲットを襲う無気力な勢羽を渡邊圭祐が演じ、ほぼ全員がハードなアクションに挑戦。シンにエスパーの能力を与えた朝倉を、声優としてだけでなく俳優としての評価も高い津田健次郎が演じることも大きなトピックだ。高橋と津田のあるシーンでは、モニターを見ながら涙する監督の姿が見られるほど、エモーショナルなストーリー軸を支える存在となっている。
撮影前からアクションの特訓をみっちりと積んだキャスト陣だったが、目黒の身体能力の高さと覚えの速さにはスタッフの多くが「すごかったです!」と興奮気味に口を揃える。「最初に目黒さんのアクションを見た時は、あまりのレベルの高さに感動してしまいました」(ラインプロデューサー・白井麻理、以下白井LP)「あの重たい特殊メイクを装着して練習されていたのですが、トランポリンなしで信じられないくらい高くジャンプしていて唖然としましたね」(アシスタントプロデューサー・難波一宏、以下難波AP)
意外なことに本格的なアクション経験はなかったという高橋は、人一倍練習に時間を割き、体つきもアクションスキルも目に見えて変化していったという。「同時期に別作品でサッカーの特訓もされながらでしたが、とにかくすごい練習量をこなしてくれました。本格的なアクションは0からのスタートだったと思いますが、アクション監督の指示を一言も聞き漏らすまいとされる姿勢が素晴らしかったです」(アシスタントプロデューサー・木戸鈴乃、以下木戸AP)。
同じくアクション経験0の横田も、時には思うようにいかない自分の動きに悔し涙を流しながら、最後まで決して諦めることなく食らいつく。「スタートはご本人も不安を抱えながらだったと思いますが、その後の上達ぶりは見事でした」(難波AP)
身体能力の高さでは八木もかなりのもの。今回神々廻のアクションシーンは少ないものの、インパクト大の“低空バック回し”を猛練習し、衣装の革靴が1足破損するほどだった。「本番ではワイヤーを使うはずでしたが、ご本人が自力で飛べるので急遽トランポリンに変更になりました」(木戸AP)
坂本の約4時間の特殊メイクほどではないが、毎回3時間半と坂本に迫る勢いの特殊メイクを施されていたのが鹿島役の塩野。「鹿島も全身が武器という設定なので、必然的に特殊メイクも全身に及びました。あの機械の手を装着してのアクションには、かなり苦労されていたようです」(鈴木大造プロデューサー、以下鈴木P)ちなみに鹿島の不気味な動きは、CGに頼ることなく塩野自身が研究を重ねて編み出したものが多々だという。
後半高橋と激しいバトルを繰り広げる渡邊は、「実は体がかなり硬いとおっしゃっていましたが、練習の成果で後半はどんどん柔軟になられていましたね」(木戸AP)という涙ぐましい努力を各々が重ねた。
まさかの目黒蓮の主演決定に監督も歓喜!
ふくよか坂本は現場の癒し。
だがその裏では壮絶な“暑さ対策”も
ふくよか坂本は現場の癒し。
だがその裏では壮絶な“暑さ対策”も
撮影は2025年5~8月、関東各地を中心に連日行われた。千葉県の巨大スタジオに作りこまれた原作から完全再現の坂本商店セットは圧巻!「店内でアクションもあるので、通常のコンビニなどよりは大き目の作りになっています。商品棚が派手に崩れたり、ワイヤーアクションもあるので、実際の店舗で撮るのは無理だと早めに判断しセットに切り替えました」(白井LP)「同じスタジオ内に遊園地の観覧車内部や、坂本と鹿島が戦う電車のセットなども作っています」(鈴木P)整然と並んだ商品棚には、よく見るとスタッフの遊び心があふれた品物もちらほら。そんな店内を楽し気に見て回るキャスト陣は早くから打ち解けている様子で、撮影合間には明るい笑い声が響くのも日常だった。しかし今回、最もスタッフが心を砕いたのは“ふくよかバージョン”の目黒への暑さ対策。汗が一切外に逃げない特殊メイク&ウィッグで、目黒の体感温度はみるみる上昇し、時には汗で特殊メイクがはがれてしまうことも。既に5月から蒸すような暑さが始まっており、スタッフは目黒専用の“冷やし部屋”を各現場で用意するのがマストとなった。「F1レーサーが着るようなクールアンダーウェアを着てもらい、そこにチューブを通し氷水が目黒さんの肌に直で流れるようにしていました。冷房が寒く感じるくらいの日は、他の役者さんはベンチコートを着ていても、目黒さんは汗が止まらない。それでも目黒さんは最後まで愚痴や文句を言うことは一切なく、“僕は大丈夫です”とおっしゃる。かっこいいなと思う反面体調不良になられたら大変なので、撮影合間は半ば強引に冷やし部屋に誘導していました」(難波AP)特殊メイクのある日は、撮影が終わった後体全体をマッサージしてもらってから帰宅していたという目黒だが、スタッフに疲れた顔を見せることはなかったという。
現場の空気を一気に明るいものにしてくれたのは、葵役の上戸。初共演ながら積極的に目黒や他のキャスト陣に話しかけ、現場の太陽のような存在だった。「目黒さんは話すだけでも汗をかくし、笑うと特殊メイクがはがれそうになるとおっしゃっていましたが、上戸さんの明るさに引っ張られてついつい笑ってしまっていましたね(笑)」(白井LP)
ふくよかな坂本は現場の癒し的存在で、家族団らんのシーンは見ている方も思わずほっこり。逆に痩せている坂本が現れると、あまりのイケメンぶりに毎日会っているスタッフでさえドギマギするという珍現象(!?)も起こっていた。だが生まれたばかりの娘・花を抱くカット(*痩せバージョン)では、とろけるような笑顔も。
撮影前から始まっていたハードなアクション練習
スタントマン泣かせ!?
目黒のガチアクションに現場も大興奮
スタントマン泣かせ!?
目黒のガチアクションに現場も大興奮
アクションのウエイトが大きい本作だが、驚くべきは目黒のアクションはほぼ吹き替え無しだったということ。「ここまでご自分でやられるのは想定外でした」と松橋Pも振り返る。「とにかくアクション勘がよく、動きもすぐに覚えてしまう。何なら動かずに後ろ姿の肩だけのカットであっても、ご自身でやられるんです。ただ不思議なもので特殊メイクの時は実質鼻しか目黒さんではないはずなのに、やっぱり目黒さんなんですよ。太った時も痩せた時も両方同一人物に見えるのは、やっぱり目黒さんにやっていただいてよかったと思うところのひとつです」
体のお肉をプルプルさせながらの華麗なジャンプ、びっくりするほど高く上がるハイキックからのビタ止まりの体幹の強さ。当然ながらふくよかになっても長い手足のリーチは変わらず、次々に繰り出される迫力満点のアクションに、「スパイダーマンみたい!」感嘆の声を上げるスタッフも。なめていた飴玉をはじき銃の弾道を変えるというカットでは、緊迫したアクションシーンであるはずなのに、丸い手で一生懸命作業する姿はどこか子供が遊んでいるような愛らしさだった。その愛らしさが最も顕著だったのが、神戸の某トンネルで撮影された鹿島戦でのひと幕。トンネルの天井から、まっすぐに落下してくる坂本のカットでは当然ワイヤーを使用。ふくよかな姿でじっと待機する目黒の姿があまりにかわいらしく、天井を見上げながらニコニコするスタッフが続出した。この日初めて目黒のふくよかバージョンを見た八木は、「すごい!(本人の)面影がないです!」と感動した様子。興味津々で目黒に話しかけるが、「一度に話しかけないでください!体が向けられないですから!(笑)」とフォローする塩野に目黒も笑いが止まらなかった。
坂本との見事なバディ感を体現していくシン役の高橋の躍動も凄まじいものがあった。直前まで入念にストレッチを繰り返し、パンチやキックを自主練する姿は真剣そのもの。目黒との息もピッタリで、ずば抜けてスピーディーな目黒の動きにしっかりついていく。「実はお2人とも人見知りで最初はどうなることかとハラハラしたのですが、撮影前のアクション練習からすぐに仲良くなられていました」(木戸AP)「本当の坂本とシンのような関係になっていましたね。お互いの信頼関係はこの3か月で相当強くなっていたと思います。シンのまっすぐさは高橋さんにピッタリだし、同時にキレのあるアクションも見事に自分のものにしていた。ただ、高橋さんもアクションをすべてご自分でやろうというスタンスだったので、そこはプロデューサーとしてはハラハラしたところです(笑)」(松橋P)
猛ダッシュからの膝スライディングで銃をぶっ放すアクションや、クルリと1回転する高速アクションなどすべて自身でこなしていた高橋。アクション監督・田渕も思わず「かっこいいよ!」と声をかけるその動きを、モニター前でじっと見つめる目黒の姿も印象的だった。
そして手がつけられないほど圧倒的な動きを見せたのが、痩せたバージョンの坂本のアクション。体も軽くなりいつも以上に自在に動ける目黒に、田渕の要求もどんどん高度なものになっていく。だが何度テイクを重ねようとも、時に楽しそうに笑顔さえ見せながらトライし続ける目黒。鹿島との電車内での戦いは、巻き込まれた乗客の老婆を優しく抱きかかえるという芝居もあったが、そのあまりのジェントルな振る舞いに、「今、(おばあちゃんが)上目遣いになってましたよね?」という塩野の鋭い指摘もあながち間違いではなかったかも!? 派手なアクションに目を奪われがちだが、坂本としての燃えるような瞳が何より強い印象を残す。大事な家族を守るため“ノーキル”の誓いを守りながら戦う坂本の姿に、監督も「もう少しにらみつけるようにできる?」と細かく演出。福田監督といえば信頼するアクション監督・田渕にアクションシーンは全面的に任せ、「アクション撮影中は寝ている」というネタがもはやテッパン化しているが(?)、「今回は寝ていませんでした!」と口々に証言するP陣。目黒の真摯な熱が監督はもちろん、現場にいる者全員に伝播していた。
ふくよか坂本は現場の癒し。
だがその裏では壮絶な“暑さ対策”も
最後まで感謝を忘れない頼もしい座長ぶり
最後まで感謝を忘れない
頼もしい座長ぶり
アクションはもちろん、初のコミカルな芝居にも挑戦した目黒。顎が外れそうになるほど大きく口を開く振り切った顔芸(?)や、絵に描いたようなアタフタ&アワアワ芝居も一切の躊躇なしで、監督も「喜劇だね~!」とモニター前で爆笑。「コミカルなシーンの前は監督とよく話し合われていましたね」(白井LP)本人は「笑わせよう」という意識は持たずに、ひたすら真面目に取り組んでいただけだと語っていたが、コメディセンスにも光るものが垣間見られた。
そんな目黒の座長としての存在感もスタッフ陣を魅了した。「黙々と背中で語るタイプの座長。目黒さんがあれだけがんばっているんだから、私たちもがんばらなきゃ!と思わせてくれる方でした」(木戸AP)「一言でいうと“ミスター気遣い”。アクションシーンはどうしても激しくなってしまうので、時にはアクション部の方の打撃が目黒さんに軽くヒットしてしまうこともあった。目黒さんにケガはなくとも、当然周りは焦ります。でも目黒さんは瞬時に“本気で狙いにきてくれてありがとうございます。次は必ずよけますね!”と、誰も傷つかないような雰囲気にもっていってくれた。男が惚れる男です」(難波AP)いわゆる“マンガ盛り”と言われる、山盛りのご飯をモリモリ食べるカットでも、一度も口から出すことなくすべてを咀嚼し食べきっていた目黒。「よく食べたね!」と感心する監督に、「せっかく用意してくださったものですし、単純においしかったので」と笑顔で返す姿も爽やかであった。
遊園地でのロケは太ったバージョンの坂本の姿を一般のお客様から隠さないといけなかったため、スタッフ総出で目黒の周りに傘をさして取り囲むことに。「しかたのないこととはいえ、絶対ストレスを感じられていたと思うのですが、そんな様子は微塵も出さず、ひたすら私たちにお礼を言われていました」(白井LP)
気遣いの人=目黒が現場中、驚きながらも最高の笑顔を見せていた瞬間。それは自身が所属するSnow Manのメンバー2人が撮影現場を訪問した時だった。「わざわざ千葉のスタジオまで向井康二さんと深澤辰哉さんが、それぞれ現場にいらっしゃって。目黒さんや高橋さん、監督とも長い時間楽しそうに話し込まれていらっしゃいました」(難波AP)現場に来られなかったメンバーからも連日かわるがわる差し入れが入り、メンバー間の絆の強さを感じさせた。
3か月の撮影を終えついにクランクアップを迎えた時も、何度もスタッフや共演者への感謝を口にしていた目黒。「特殊メイクをとって素の目黒として皆さんに会った時も、人見知りしないで話しかけてください」としっかり茶目っ気も見せていた。
「本作は福田監督の真骨頂であり、目黒蓮さんの新しい一面が見られる作品になっていると思います。家族皆で楽しめるスーパーアクションエンターテイメント!是非ご期待ください」(松橋P)
スタントマン泣かせ!?
目黒のガチアクションに現場も大興奮